捨てられる魚を、食卓の主役にする。ベンナーズが水産業のあきらめを、需要に変えていく

みなさんこんにちは、ラブカン編集長の陣脇です。ラブカンは、日本全国のLOVED COMPANYを紹介するメディアです。
会社の思想や文化、働く人の想い、事業に込められた背景を通して、条件だけでは見つからない「愛される会社」を紹介していきます。
今回取り上げるのは、福岡を拠点に水産事業を展開する株式会社ベンナーズです。
ラブカン編集部が感じたLOVEDポイント
- 捨てられる魚を安さではなく、食卓で選ばれる主役へ生まれ変わらせている
- 漁師と買い手をつなぐだけで満足せず、魚を食べる需要そのものからつくり出している
- 業界を背負って、川上から川下までのフルバリューチェーンモデルに挑戦している
捨てられる魚に、価値をつける
大きさが不揃いだったり、少し傷がついていたり、一般には知られていない魚種だったり。
味には問題がなくても、流通しづらい魚は「未利用魚」と呼ばれ廃棄されています。その量は年間約100万トンで、日本国内で水揚げされる魚の量の約3割とも言われます。
フィシュル!は、そうした魚を仕入れ、骨や下処理の手間を省き、調味料で味つけしたミールパックとして家庭へ届けています。袋から出して焼くだけ、あるいは解凍してそのまま食べられるため、魚料理を面倒に感じていた人でも取り入れやすい商品です。
「安いから買ってください」とお願いするのではなく、おいしさと便利さを加え、食卓で積極的に選びたくなるものへ変える。
社会課題を、消費者の善意だけに頼らない。その魚が本来持っていた価値を、現代の暮らし、食卓に合う形で届けているのです。
漁師と消費者をつなぐだけでは、足りなかった
ベンナーズは当初、売り手と買い手を直接つなぐBtoBのプラットフォームから事業を始めました。
しかし、ある時漁師さんから「単価が上がるのはうれしいけれど、ボリュームを何とかできないか」と相談を受けます。流通を効率化して、一匹あたりの値段を上げても、魚を食べる人が減り続ければ、業界全体の未来は変わらない。
必要だったのは、魚を右から左へ動かす仕組みではなく、魚を食べたいと思う人を増やすことでした。コロナ禍で売上が大きく落ち込んだことも重なり、家庭へ直接魚を届けるサービスへと事業を転換します。
コロナという未曾有の危機が後押ししてくれる形となり、ここからベンナーズの主力事業となる『フィシュル!』が産声を上げるのでした。
「未利用魚なんて、売れるわけない」
通常の魚の商品では、「サバ」「ブリ」「サケ」といった魚種が表面に大きく表示されます。
一方、フィシュル!では「煮切り醤油漬け」「ハーブオイルコンフィ」のように、味つけを前面に出しています。使われる魚は漁獲状況によって変わるため、魚種は裏面の表示を見るまで分からないこともあります。
立ち上げ当初は、「中身が分からない商品は売れない」と否定的に見られ、厳しいお言葉をいただくことも多かった、、、。
それでもベンナーズは、考え方を曲げませんでした。地道に販売を続け、メディアにも出演しながら、未利用魚のおいしさや、フィシュル!の価値を伝え続けました。
最初は受け入れられなかった商品も、少しずつ食卓へ広がり、これまで7万人以上の方々にお魚を届けるサービスに成長しています。
魚を届ける会社から、水産業を支える会社へ
フィシュル!が成長すれば、商品をつくるための加工能力も必要になります。
ベンナーズは委託先だけに製造を頼るのではなく、自社工場や全国の提携拠点を活用し、さらに水産加工会社のグループ化にも踏み出しています。
その背景にあるのが、水産業の川上から川下までをつなぐ「フルバリューチェーン」の構想です。漁や仕入れ、加工、商品開発、販売を部分的に改善するだけでなく、業界全体が持続できる仕組みへ組み直そうとしています。
一つのサービスを成長させるだけなら、もっと軽やかな経営もできるはずです。それでも、製造現場や流通の課題を誰かに任せたままでは、目指す未来へ届かない。
効率のよい手段だけを取るのではなく、難しい工程も含めて産業を引き受けようとしている。ここに、ベンナーズの覚悟が表れているなあと感じます。
「三方よし」を、きれいごとで終わらせない
ベンナーズが掲げるミッションは、「作り手よし、食べる人よし、そして社会よしな世界を新たなビジネスモデルと技術で実現する」です。
作り手に利益を還元しようとすれば、販売価格が上がる。消費者の安さだけを追えば、産地や加工現場に負担が寄る。環境への配慮を優先しても、事業として続かなければ広がりません。
三者の利益は、自然にはそろわないものです。だからこそ、未利用魚に付加価値をつけ、家庭で使いやすくし、自ら需要を生み出す。さらに、仕入れから販売までの構造にも手を入れていく。
誰か一人の負担で成立する「いいこと」ではなく、関わる人たちが続けられるビジネスへ変えていくチャレンジをされているのだと思います。ベンナーズさんが目指す、水産業界のリーディングカンパニーの姿が今から楽しみです。
読み終えて、もう一度。
ここまで読んで、最初に感じた3つのLOVEDをもう一度。
- 捨てられる魚を安さではなく、食卓で選ばれる主役へ生まれ変わらせている
- 漁師と買い手をつなぐだけで満足せず、魚を食べる需要そのものからつくり出している
- 業界を背負って、川上から川下までのフルバリューチェーンモデルに挑戦している
ラブカンでは、日本全国にある「愛される会社」やLOVEDな取り組みを紹介していきます。たくさんのLOVED COMPANYとの出会いが、あなたの価値観を少し広げ、自分のものさしで生きるきっかけのひとつになれば嬉しいです。
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