「大きい会社」ではなく「いい会社」へ。大橋運輸が変えた仕事と経営
みなさんこんにちは、ラブカン編集長の陣脇です。ラブカンは、日本全国のLoved Companyを紹介するメディアです。
会社の思想や文化、働く人の想い、事業に込められた背景を通して、条件だけでは見つからない「愛される会社」を紹介していきます。
今回取り上げるのは、愛知県瀬戸市で70年以上にわたり地域とともに歩んできた、大橋運輸株式会社です。
ラブカン編集部が感じたLOVEDポイント
- 社員を大切にすることを起点に、持続的に利益を生み出せる事業モデルへ変えている
- 健康経営やDE&Iを福利厚生で終わらせず、一人ひとりの力を活かす経営につなげている
- 地域課題を社会貢献で終わらせず、行政や地域とともに新しい価値や仕事につなげている
社員を大切にするからこそ、仕事そのものを変えた
大橋運輸は15年ほど前まで、売上の8割以上を大手運輸会社の下請け業務に頼っていました。しかし、価格が優先される仕事では、どれだけ付加価値をつけても利益を生みづらい。長距離輸送が多いため、ドライバーの働き方にも負担がかかります。
そこで大橋運輸は、下請けや長距離輸送を少しずつ減らし、地域企業との直接取引や、生前整理・引っ越しといった地域密着型の仕事へと舵を切りました。
一時的に売上が下がることはわかっていました。それでも、社員が長く安心して働ける環境をつくり、会社として持続的に利益を生み出していくためには、仕事そのものを変える必要があると考えました。
現在、下請け比率は3%以下まで低下。長距離輸送を減らしたことで、ドライバーが毎日家に帰れる働き方にもつながっています。
「社員を大切にする」と掲げる会社はたくさんあります。でも大橋運輸は、そのために福利厚生を増やしただけではありません。社員を大切にするからこそ、長く働き続けられる仕事をする。そして、持続的に利益を生み出せる仕事を作る。
会社の稼ぎ方そのものを変えてきたところに、大橋運輸の「人を大切にする経営」の本気度を感じます。
健康は、福利厚生ではなく経営そのもの
大橋運輸は、健康経営にも早くから取り組んできました。
地域の医療機関との連携、管理栄養士による栄養指導、禁煙支援、社員の家族への健康診断の推奨など、その取り組みは多岐にわたります。2017年から継続して健康経営優良法人に認定され、2021年以降はブライト500にも連続認定されています。
特徴的なのは、健康を「社員へのサービス」としてだけ捉えていないことです。
運転を仕事にするドライバーにとって、健康状態は安全にも直結します。病気になってから治療するのではなく、健康なうちから予防する。社員が長く元気に働けることは、本人にとっても、会社にとっても大切なことです。
大橋運輸が考える健康経営には「正解も終わりもない」といいます。会社が一方的に健康を管理するのではなく、一人ひとりが自分の健康に関心を持てる仕組みをつくっていく。
健康であることを、働くための土台として本気で考える。だからこそ、健康経営が一時的な施策ではなく、経営そのものになっているのだと思います。
「できないところ」ではなく、「できるところ」を見る
大橋運輸が掲げるDE&Iの言葉は、とてもシンプルです。
「みんな違う。だから、いい。」
女性、外国人、障がいのある人、LGBTQ、高齢者、子育て中の社員など、多様な人が活躍できる環境づくりを進めています。その根底にあるのが、「できないところではなく、できるところを見る」という考え方です。
障がいのある社員だから特定の仕事を任せるのではなく、その人自身の得意なことを見つけ、チームの中で能力を発揮してもらう。短時間勤務であっても賞与や管理職登用の対象にするなど、「働ける時間」ではなく、仕事で生み出す価値を見る仕組みもつくられています。
多様な人を採用すること自体が目的ではありません。違う経験や視点を持つ人がいることで、これまでになかったサービスや価値が生まれる。
実際、大橋運輸は2017年に運輸業の中小企業として全国で初めて経済産業省「新・ダイバーシティ経営企業100選」に選定され、その後「100選プライム」、2024年にはD&I Awardの中小企業部門大賞も受賞しています。
違いをなくすのではなく、違いを会社の力に変える。大橋運輸が大切にしているのは、そんな組織のあり方です。
地域課題を、地域と一緒に新しい価値へ
さらに面白いのが、社員のために始めた取り組みが、会社の外へと広がり、地域の課題解決にもつながっていることです。
たとえば健康経営。社内で培った知識や経験を活かし、地域住民向けの運動教室や健康相談、食育活動などを実施しています。2023年には瀬戸市、瀬戸市社会福祉協議会と健康寿命の延伸に向けた三者協定も締結しました。
活動は健康だけではありません。交通安全教室や特殊詐欺防止の啓発、河川清掃など、さまざまな地域課題に向き合っています。
そして、大橋運輸だけで解決しようとしているわけではありません。行政や社会福祉協議会、地域の人々、企業などと関わりながら、地域の課題を一緒に探り、できることから実践しています。
一見すると、「運送会社がそこまでやるの?」と思う取り組みもあります。でも、大橋運輸にとってはすべてつながっています。
社員が健康になる。その経験を地域へ還元する。地域との関係が深まる。そこで新しい課題に気づき、また事業や仕事が生まれる。社会貢献で終わらせるのではなく、地域課題を新しい事業や価値創造につなげているのです。
また、鍋嶋さんが近年意識しているのが、「ローカルゼブラ」という考え方です。地域に必要とされながら、事業としても持続していくというもの。
人や地域を大切にすることと、利益を生み出すことを分けず、その両方が循環する事業をつくる。その考え方は、大橋運輸がこれまで歩んできた道にも重なります。目指しているのは、「なにかあったら大橋運輸」と思ってもらえる存在です。
「人を大切にする経営」が、会社の中だけにとどまらず、事業を変え、地域との新しい関係をつくっていく。それが、大橋運輸という会社のあり方なのだと思います。
読み終えて、もう一度。
ここまで読んで、最初に感じた3つのLOVEDをもう一度。
- 社員を大切にすることを起点に、持続的に利益を生み出せる事業モデルへ変えている
- 健康経営やDE&Iを福利厚生で終わらせず、一人ひとりの力を活かす経営につなげている
- 地域課題を社会貢献で終わらせず、行政や地域とともに新しい価値や仕事につなげている
ラブカンでは、日本全国にある「愛される会社」やLovedな取り組みを紹介していきます。たくさんのLoved Companyとの出会いが、あなたの価値観を少し広げ、自分のものさしで生きるきっかけのひとつになれば嬉しいです。
「この会社、面白い」
「この働き方、もっと知られてほしい」
「うちの会社にも導入したい!」
そんな事例があれば、ぜひ教えてください。