街の風景になった赤い自転車。チャリチャリが地域と一緒に「なくてはならない」をつくる
みなさんこんにちは、ラブカン編集長の陣脇です。ラブカンは、日本全国のLoved Companyを紹介するメディアです。
会社の思想や文化、働く人の想い、事業に込められた背景を通して、条件だけでは見つからない「愛される会社」を紹介していきます。
今回取り上げるのは、福岡をマザーシティに、赤いシェアサイクル「チャリチャリ」を展開するチャリチャリ株式会社です。
ラブカン編集部が感じたLOVEDポイント
- 福岡を「マザーシティ」と呼び、自分たち自身が根を張る場所として向き合っている
- 行政、地域企業、利用者など、多くの人に支えられながら街のインフラを育てている
- 利用が広がるほど、安全や公共交通との共存など、街に対する責任まで引き受けようとしている
いつの間にか、街の日常になっていた
チャリチャリが掲げるミッションは、「まちの移動の、つぎの習慣をつくる」です。
代表の家本賢太郎さんは、チャリチャリを、バスや鉄道のように使っていることすら意識しないほど日常に溶け込んだ存在にしたいと語っています。
その未来は、福岡ではすでに少しずつ現実になっています。2018年に22カ所のポートから始まり、2026年4月には福岡エリアで1,000カ所を突破。福岡市では累計4,200万回以上利用されています。
とあるインタビューでは、社員が外に出ればチャリチャリを見ない日はないほどになり、仕事で地域の人と会っても「あのチャリチャリね」「使っています」と言ってもらえることが多いと語られています。
かくいう私も、気づけばチャリチャリが日常の一部になっている一人です。移動の際は、わざわざ意識することもなく、自然と選択肢の中に入っています。
もちろん、利用回数が多いから「愛されている」と単純に言い切れるわけではありません。ただ、何度も使われ、気づけば誰かの日常の選択肢になっている。
それは、チャリチャリが単なる移動手段を超えて、福岡という街の日常に受け入れられている一つの証なのだと思います。
福岡は「展開エリア」ではなく、マザーシティ
チャリチャリは福岡のことを、単なるサービス提供地域ではなく、「マザーシティ」と呼んでいます。
サービス開始当初、運営会社の本社は東京にありました。しかし2022年、会社は本店を福岡へ移します。現在も福岡市中央区に本社を構えています。
代表の家本さん自身はもともと福岡に縁があったわけではありません。それでもチャリチャリの仕事を通じて、自転車で街を走り、道を覚え、店を知り、人と出会ううちに、福岡の街を身近に感じ、愛せるようになったと話しています。
チャリチャリが街の人を街につなぐ一方で、チャリチャリで働く人自身も、この仕事によって街との関係を深めているのだと感じます。
全国展開するサービスにとって、地域は往々にして「市場」になります。でもチャリチャリにとって福岡は、自分たち自身が暮らし、働き、サービスを使いながら、その未来に当事者として関わる場所でもあるのではないでしょうか。
「マザーシティ」という言葉には、そんな距離の近さと覚悟が表れているように感じます。
チャリチャリは、地域から「場所」を借りてできている
チャリチャリに欠かせないのが、自転車を貸し借りする「ポート」です。実は、これほど街中にあるポートの多くは、チャリチャリだけの力でつくられたものではありません。
マンションの一角。店舗の軒先。オフィスの空いたスペース。地域の人たちが、自分たちの土地の一部を「街の移動」にひらいてくれることで、チャリチャリは成り立っています。
だからチャリチャリは、ポートオーナーや取引先、株主を招いた「感謝の集い」も開催しています。ポートはサービスに「絶対になくてはならないもの」であり、場所を提供してくれる人たちによってサービスが成り立っていると説明しています。
地域の人が場所を貸し、企業が支え、行政が協力し、利用者が使う。その関係そのものがサービスをつくっている。赤い自転車の一台一台の後ろに、街の人たちとの関係があるのです。
「オール福岡」でやる
資本のあり方にも、その考え方が表れています。チャリチャリは事業を拡大するなかで、福岡の九州朝日放送(KBC)や地域企業などから出資を受けてきました。
その理由について、チャリチャリは各地域に強力な「応援団」が必要だからだと説明しています。行政とも、地元企業とも、地域の人ともフラットにつながる。その街の人たちの輪の中に入り、一緒に育てる。チャリチャリの地域展開は、その積み重ねです。
サービスを導入して終わりではなく、行政や地域と関係を重ねながら、10年以上の時間軸で街の移動を担っていく。
そこには、スタートアップというより、地域のインフラを背負う会社としての姿が見えてきます。
愛されるほど、責任も増えていく
街の日常になるということは、良いことばかりではありません。多くの人が利用すれば、自転車の交通ルールや駐輪マナー、事故への向き合い方など、会社が負う責任も大きくなります。
チャリチャリは2025年、自転車月間に合わせて社員33名が福岡市内のポートへ出向き、利用者への安全啓発やポート、車体の清掃を行いました。警察や地域企業とも連携し、自転車の安全利用を呼びかけています。
掲げているのは、チャリチャリ利用者だけの安全ではありません。「地域に暮らすすべての人が安心安全に自転車を活用できる環境」をつくること。サービスが小さいうちは、自分たちのユーザーだけを考えていてもいいかもしれません。
でも、街のあちこちを何千台もの自転車が走るようになれば、歩行者や車、公共交通、そこに暮らす人たちすべてとの関係を考えなければなりません。
街に必要とされるほど、その街への責任も大きくなる。「たくさん乗ってもらうフェーズ」から、「街のインフラを背負う会社」へ少しずつ変わっているのだと思います。
街に愛され、街を愛する
2018年、22カ所から始まったチャリチャリのポートは、今では1,000カ所を超えています。でも、増えてきたのはポートだけではありません。場所を貸してくれる人。日々使ってくれる人。一緒に街の未来を考える企業や行政。
チャリチャリは、そうした人たちとの関係を一つずつ積み重ねながら、福岡の街に根を張ってきました。チャリチャリが育てているのは、移動の仕組みだけではなく、街との関係そのものなのだと思います。街に愛され、その街を自分たちも愛していく。赤い自転車がいつの間にか街の風景になっているのは、その積み重ねがあるからなのかもしれません。
読み終えて、もう一度。
ここまで読んで、最初に感じた3つのLOVEDをもう一度。
- 福岡を「マザーシティ」と呼び、自分たち自身が根を張る場所として向き合っている
- 行政、地域企業、利用者など、多くの人に支えられながら街のインフラを育てている
- 利用が広がるほど、安全や公共交通との共存など、街に対する責任まで引き受けようとしている
ラブカンでは、日本全国にある「愛される会社」やLovedな取り組みを紹介していきます。たくさんのLoved Companyとの出会いが、あなたの価値観を少し広げ、自分のものさしで生きるきっかけのひとつになれば嬉しいです。
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そんな事例があれば、ぜひ教えてください。