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株式会社トビムシ

社員が「その土地の人」になるまで、会社は名前を手放し続ける

株式会社トビムシ 会社情報イメージ
文・齊間

みなさんこんにちは、ラブカン編集部の齊間です。ラブカンは、日本全国のLoved Companyを紹介するメディアです。

会社の思想や文化、働く人の想い、事業に込められた背景を通して、条件だけでは見つからない「愛される会社」を紹介していきます。

今回取り上げるのは、東京都港区に本社を置きながら、全国各地に別々の名前を持つ会社を生み出し続けている、株式会社トビムシです。

この会社のことを、誰かに。

ラブカン編集部が感じたLOVEDポイント

  1. 全国に10社以上の関連会社があるのに、社名も社風もひとつとして揃えていない
  2. 求人を見ると大工、林業家、地域おこし協力隊と職種はバラバラで、「らしい人材」の型を用意していない
  3. 東京の本体は経理・人事などの裏方に徹し、地域の意思決定は各地域会社に委ねている

全国に10拠点、でも「トビムシ」を名乗る会社はない

全国各地に別の名前を持つ関連会社

好きなのは、トビムシという名前の使われ方です。株式会社トビムシの沿革を読むと、2009年の株式会社西粟倉・森の学校から2025年の株式会社森の環まで、16年にわたって設立されてきた会社が10社以上並びます。

ニセコ雪森考舎、東京・森と市庭、飛騨の森でクマは踊る、もりまち、八女流。どの社名にも、トビムシという文字は入っていません。事業紹介のページでも、これらは「地域商社・機能会社の設立・運営」という言葉で説明されるだけで、傘下や支店という表現は出てきません。本社は東京・六本木にありますが、全国の拠点はそれぞれ別の名前で、別の会社として動いています。

この地域名を背負わない設計が、素敵だなと思いました。多くの企業は、拠点を増やすときに本社の名前や色を新しい土地に持ち込みます。トビムシは、その逆をいっているようです。

大工も、林業家も、地域おこし協力隊も。同じ会社の採用ではない

印象に残ったのは、採用情報のページに並ぶ職種の幅でした。

東京の本体は経理財務・人事労務・総務を、ニセコ雪森考舎は森林マネジメントや製材、広報を、奥多摩の東京・森と市庭は大工または建築士を、岡崎のもりまちは移住促進や地域資源調査を、島根県吉賀町の森の環は地域おこし協力隊としての「森師研修員」を、山口県萩市の萩・森倫館は広場運営スタッフを、それぞれ全く違う職種で募集しています。

一つの会社の求人として並べて説明することが難しいほど、募集内容はばらばらです。

多くの企業は、採用の場面で「求める人物像」をひとつにまとめようとします。ここには、それがありません。地域ごとに必要な人が違うのなら、募集する内容も違って当然だという考え方が、採用ページの構成そのものに表れているように思います。

「勝手にやっている」ようにしか見えない、その理由

面白いと思ったのは、外部から見たトビムシの姿についての証言でした。トビムシを長年見てきた藻谷浩介氏は、「各地でそれぞれ勝手な人たちが勝手にやっているようにしか見えない」と語っています。

藻谷浩介氏の言葉を紹介する記事イメージ

この言葉は、外から見た組織の姿をよく捉えていると思います。本部が各地域を一元管理しているのではなく、それぞれの地域会社が独立した経営体として動いている。だからこそ外から見ると統一感がなく、勝手にやっているように映るのではないでしょうか。実際には、その「勝手さ」こそが、地域ごとの違いに向き合うための設計なのだと思います。

コピペしない、を徹底すると会社の形まで変わる

地域ごとに解決策を変える、という話はめずらしくないかもしれません。けれどトビムシの場合、その徹底ぶりは会社の形そのものにまで及んでいるように見えます。

地域ごとに法人を分けて事業を進めるトビムシ

地域支援の難しさについて、代表取締役の竹本吉輝氏は、「地域の規模や持っているリソース、住んでいる人々とその人間関係など、どれひとつとして同じではない」と語っています。

ある地域でうまくいった仕組みを、そのまま別の地域に当てはめない。この考え方を突き詰めていくと、事業のやり方だけでなく、会社そのものの形も変えざるを得なくなるのだと思います。同じ経営体で全国を管理しようとすれば、どこかで地域の実情と本部の都合がぶつかります。トビムシは、その摩擦を避けるために、法人ごと分けるという選択をしているのではないでしょうか。

東京の本体が、あえてやらないこと

もうひとつ好きなのは、東京の本社が担う役割の地味さです。採用情報を見る限り、本体が募集しているのは経理財務や人事労務、総務といった、いわゆるバックオフィス業務です。地域の意思決定や日々の運営を主導する立場ではありません。本部が前に出ず、地域の会社がそれぞれの土地で主役であり続ける。この構造を保つために、あえて目立たない役割を選んでいるように見えます。

会社を大きくしようとするとき、多くの組織は本社の権限を強め、色を濃くしていきます。トビムシは、その逆を選んでいるように思います。社員が「トビムシの人」である前に「その土地の人」になっていくことを、静かに後押ししているのではないでしょうか。

読み終えて、もう一度。

ここまで読んで、最初に感じた3つのLOVEDをもう一度。

  1. 全国に10社以上の関連会社があるのに、社名も社風もひとつとして揃えていない
  2. 求人を見ると大工、林業家、地域おこし協力隊と職種はバラバラで、「らしい人材」の型を用意していない
  3. 東京の本体は経理・人事などの裏方に徹し、地域の意思決定は各地域会社に委ねている

ラブカンでは、日本全国にある「愛される会社」やLovedな取り組みを紹介していきます。たくさんのLoved Companyとの出会いが、あなたの価値観を少し広げ、自分のものさしで生きるきっかけのひとつになれば嬉しいです。

「この会社、面白い」

「この働き方、もっと知られてほしい」

「うちの会社にも紹介したい取り組みがある」

そんな事例があれば、ぜひ教えてください。

参照サイト

この会社のことを、誰かに。