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株式会社ヤマップ

都市で暮らす私たちも、山から続く「流域」の一員だった。YAMAPが見せてくれた自然とのつながり

山・川・街・海のつながりと水の循環を示したイラスト
文・陣脇康平(じん)

みなさんこんにちは、ラブカン編集長の陣脇です。ラブカンは、日本全国のLoved Companyを紹介するメディアです。

会社の思想や文化、働く人の想い、事業に込められた背景を通して、条件だけでは見つからない「愛される会社」を紹介していきます。

今回取り上げるのは、福岡市博多区に本社を構え、登山アプリ「YAMAP」を中心に事業を展開する、株式会社ヤマップです。(写真:永井 匠太郎)

この会社のことを、誰かに。

ラブカン編集部が感じたLOVEDポイント

  1. 自然を守ることを特別な活動にせず、自分たちの事業の中で実践している
  2. 仕事を人生から切り離さず、一人ひとりの「どう生きたいか」まで含めて働くことを捉えている
  3. 創業者の価値観を会社の共通言語に変え、メンバーとともに磨き続けている

都市に暮らす自分も、「流域」の一員だった

自分が暮らしている場所も、山から海まで続く「流域」の一部。

YAMAP流域地図に洪水浸水想定区域と土砂災害想定区域を重ねた画面

川や水の流れは、山、森、街、田畑、海をつなぎます。行政区画や県境が異なっていても、同じ水の流れの中にある場所は、一つの流域として捉えることができます。

2024年、ヤマップは、自分がいる場所がどの流域に属しているのかを確認できる「YAMAP流域地図」を公開しました。

地図を開くと都市で暮らす私たちも、自然から離れた場所にいるわけではないことに気づきます。普段使っている水は山や森から流れてきて、その先には川があり、海がある。街での暮らしも、その大きな循環の中にあることが分かります。

私はこれまで、自然とのつながりとは、山に登ったときや海へ出かけたときに感じるものだと思っていました。

でも、YAMAP流域地図が教えてくれたのは、自然と人間の距離を縮めることではなく、そもそも私たちは離れていなかったという事実です。

普段歩いている街も、飲んでいる水も、暮らしの営みも、その先で山や川、海へとつながっている。流域という視点を持つことで、どこか遠くにあると思っていた自然が、実は日々の暮らしのすぐそばにあるものとして感じられるようになりました。

山・川・街・海を、一つのつながりとして見る

ヤマップ代表の春山慶彦さんは、自身の自然の中での経験を通して、以前から人と自然の関係について考えてきたと語っています。流域思考との出会いは、そうした感覚を、具体的な形にするきっかけになりました。その一つが、流域地図です。

山、川、街、海を別々のものとして見るのではなく、水の流れを軸に一つの生命圏として捉える。流域地図を開けば、自分の住む街と上流にある山や森とのつながりが見えてきます。普段飲んでいる水がどこから来て、その先でどの海へとつながっていくのか。目には見えにくい自然との関係を、自分自身の暮らしに引き寄せて確かめることができます。

思想を掲げるだけではなく、実際に触れ、自分の手で確かめられるサービスとして提供する。その姿勢に、ヤマップらしさが表れているように感じます。

そして、この「切り離さずに考える」という眼差しは、自然だけに向けられているわけではありません。働くことと、生きることの関係にも、同じような考え方を持っているようです。

「生き方」の中に、仕事がある

春山さんは自身の仕事観について、仕事には三つの視点が重要だと話しています。自分が心からその仕事をしたいと思えること。他の人の役に立つこと。そして、環境を含めた社会にとって意味があること。

木の壁の部屋でテーブルを囲んで話す3人

こうした仕事観の根底にあるのが、「生き方の中に仕事がある」という考え方です。かつては、仕事とプライベートをはっきり分けることが一般的でした。でも春山さんは、仕事と生き方は次第に重なり、今はどう働くかの前に「どう生きるか」が問われる時代になっていると語っています。

これは、仕事のために人生を捧げるという意味ではありません。むしろ逆で、自分はどう生きたいのか。その延長線上に、仕事を置く。会社があらかじめ用意した仕事に人を当てはめるのではなく、一人ひとりの生き方と、社会に必要とされる仕事が重なる場所を探していく。

「地球とつながるよろこび。」という企業理念は、ユーザーに届ける体験だけではなく、そこで働く人たち自身の生き方にもつながっているように感じます。

会社の哲学を、社長一人のものにしない

2026年、ヤマップは会社として大切にしている価値観や未来像をまとめた『YAMAP WAY BOOK』をつくりました。一見すると、企業理念や行動指針をまとめたカルチャーブックのようにも見えます。しかし、その一冊が生まれた背景には、組織が大きく崩れた経験がありました。

切り株の上に置かれた『YAMAP WAY BOOK』

春山さんは、コロナ禍以降のフルリモート化などを経るなかで、会社が大切にしていた価値観を「暗黙知」のままにしてしまったことを振り返っています。

その経験をきっかけに、「会社とは何か」「経営とは何か」を学び直し、これまで社内に積み重なってきた経験や知恵、姿勢を言葉にして、暗黙知から共有知へ変えていきました。

そのためにつくられたのが『YAMAP WAY BOOK』です。印象的なのは、春山さん自身もこのBOOKに従う一人だと考えていることでした。創業者の価値観を社員へ伝えるためだけの本ではなく、言葉にすることで春山さん自身からも切り離し、「ヤマップという会社」が大切にするものとして置いておく。

だからこそ、たとえ社長の判断であっても、会社の哲学と違えば、メンバーが「それは違うのではないか」と言える。哲学を共有するとは、社員を同じ方向へ従わせることではなく、社長を含めた全員が立ち返れる場所をつくること。

私はそこに、ヤマップのメンバーに対する対等な眼差しを感じました。

「つながる」を、会社の外にも内にも

『YAMAP WAY BOOK』にまとめられたのは、14年のなかで重ねてきた成功や失敗、組織が揺らいだ経験も含めて、自分たちが大切にしたいと考えてきたことです。

制作にはメンバーも関わり、一人ひとりに一冊ずつ渡されています。会社の文化を「なんとなく分かるもの」にせず、みんなが立ち返り、問い直せるものとして残しているところにも、ヤマップらしさを感じます。

木の壁の部屋で参加者と話すヤマップ代表の春山慶彦さん

そして、この姿勢は会社の外にも広がっています。YAMAPふるさと納税では、自治体と連携し、集まった寄付を登山道の整備や自然環境の保全に活用しています。山を楽しみ、自然から価値を受け取った人が、その山を未来へ残す側にもなる。自然保全を事業と切り離すのではなく、人と地域、自然のあいだに循環をつくる取り組みです。

流域地図では、街と山のつながりに気づかせる。会社の中では、生き方と仕事を切り離さず、経験や哲学をメンバーと共有する。一見違う取り組みの根底にあるのは、本来つながっているものを、分断しないことなのかもしれません。

「地球とつながるよろこび。」をユーザーに届けるだけではなく、自分たちの働き方や組織のあり方でも実践する。まず組織の中で実践し、その積み重ねを社会へ届けていく。

そこに、ヤマップという会社の誠実さと、言葉だけで終わらせない強さを感じました。

読み終えて、もう一度。

ここまで読んで、最初に感じた3つのLOVEDをもう一度。

  1. 自然を守ることを特別な活動にせず、自分たちの事業の中で実践している
  2. 仕事を人生から切り離さず、一人ひとりの「どう生きたいか」まで含めて働くことを捉えている
  3. 創業者の価値観を会社の共通言語に変え、メンバーとともに磨き続けている

ラブカンでは、日本全国にある「愛される会社」やLovedな取り組みを紹介していきます。たくさんのLoved Companyとの出会いが、あなたの価値観を少し広げ、自分のものさしで生きるきっかけのひとつになれば嬉しいです。

「この会社、面白い」

「この働き方、もっと知られてほしい」

「うちの会社にも導入したい!」

そんな事例があれば、ぜひ教えてください。

参照サイト

この会社のことを、誰かに。