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藤田金属株式会社

「つくれるもの」を決めつけない。藤田金属の町工場らしくない挑戦

藤田金属の鉄フライパン
文・陣脇康平 jin

みなさんこんにちは、ラブカン編集長の陣脇です。ラブカンは、日本全国のLoved Companyを紹介するメディアです。

会社の思想や文化、働く人の想い、事業に込められた背景を通して、条件だけでは見つからない「愛される会社」を紹介していきます。

今回取り上げるのは、大阪府八尾市で鉄フライパンを中心とした金属製品をつくる、藤田金属株式会社です。

この会社のことを、誰かに。

ラブカン編集部が感じたLOVEDポイント

  1. 受け継いだ職人技にこだわるだけでなく、新しい技術やデザインを柔軟に取り入れている
  2. 工場を閉じた場所にせず、つくる過程までお客さまにひらいている
  3. 「町工場だからここまで」と線を引かず、異業種や若い世代と混ざりながら挑戦している

「ほかができること、なんでうちはできへんねん」

藤田金属のものづくりを象徴する、ある考え方があります。創業者から受け継がれてきた、「ほかができるのに、自分たちにできない理由はない」という姿勢です。

金型製造からプレス、へら絞りまでを自社で手がける藤田金属

一般的な町工場では、金型、プレス、加工などをそれぞれ別の会社が担うことも少なくありません。一方、藤田金属は金型製造からプレス、へら絞り、販売まで、その多くを自社で行っています。

だから、新しい商品を思いついたときにも、自分たちで試せる。少し形を変えたい。新しい加工を試したい。そんなとき、社内で相談しながらすぐに手を動かせます。

面白いのは、昔ながらの職人技だけを守っているわけではないことです。

三代にわたって受け継いできた金型やへら絞りの技術を大切にしながら、NCマシンやレーザーカッターといった新しい設備も取り入れる。職人技か、テクノロジーかのどちらかを選ぶわけではなく、いいものをつくるためなら両方を使う。

伝統を守ることと、新しいことを始めることを分けない。そんな姿勢が、藤田金属のものづくりを支えているように思います。

町工場に「デザイン」を持ち込んだ

藤田金属の転機のひとつが、自社商品の開発でした。

かつてはOEMを中心にものづくりをしていましたが、価格競争が激しくなり、自分たちの技術だけでは商品の価値を十分に伝えきれない状況が続いていました。

そこで生まれたのが、自分好みに素材や持ち手などを選べる「フライパン物語」。さらに、その次に藤田金属が向き合ったのが「デザイン」でした。

デザインユニットTENTと開発した「フライパンジュウ」

外部のデザインユニットTENTと組み、「つくる」と「食べる」を一つにした「フライパンジュウ」を開発します。

調理した後に持ち手を外せば、そのまま食卓へ出せる。アイデアだけを聞けばシンプルですが、着脱できる持ち手の開発には約2年を費やしました。

町工場の技術だけで完結させず、自分たちにないものを外から借りる。そして、デザイナーのアイデアを形にできる技術は、自分たちが持つ。

外と組むことは、自分たちらしさを失うことではない。

むしろ、自分たちの技術がどこまでいけるのかを広げることでもある。藤田金属を見ていると、そんなものづくりのあり方が見えてきます。

工場を、隠さない

藤田金属には、少し珍しい場所があります。工場の中を見渡せる直販ショップです。実際に商品を手に取りながら、そのすぐそばでフライパンがつくられていく様子を見ることができます。

工場をひらき、製造工程を見せる「フライパンビレッジ」

さらに「フライパンビレッジ」として工場をひらき、製造工程を公開。オンラインでも工場の様子を発信してきました。

普通、工場はお客さまから見えない場所にあります。完成した商品だけが店頭に並び、「誰が、どのようにつくったのか」は見えない。藤田金属は、その距離を近づけています。

鉄板が切られ、曲げられ、焼かれ、一枚のフライパンになっていく。その背景まで見せることで、商品だけでは伝わらない職人の仕事や技術を知ってもらう。私はここに、自分たちのものづくりへの自信を感じました。

見せるために工場をきれいにするのではなく、普段の仕事そのものを見てもらう。ものづくりの価値は、完成品の中だけにあるのではない。藤田金属は、つくる過程まで含めて価値として届けようとしているように思います。

「募集してないのに来た人」を採用する

藤田金属らしさは、採用にも表れています。ある若手社員は、藤田金属が新卒採用を募集していない時期に、テレビで会社を知り、自ら「新卒採用していませんか」と問い合わせました。

すでに大手企業から内定を得ていたため、藤田盛一郎社長は一度「やめた方がいい」と伝えたそうです。それでも本人の意思は変わらなかった。後日、展示会を手伝ってもらい、改めて話をしたうえで採用に至りました。

入社後、その社員はCADやLoved Companyを学び、それまで手書きだった図面のデジタル化にも取り組んでいます。ここで面白いのは、単に若い人を採用したことではありません。新しく入った人が、会社のやり方そのものを変えていることです。

藤田金属では、ベテランが若手へ技術を教える一方で、若手から「こうした方がいいのでは」と意見を言える関係も大切にしています。新しい加工を導入するときには、年齢や経験に関係なく、全員がゼロから考える。技術を受け継ぐだけなら、先輩のやり方をそのまま真似すればいい。でも藤田金属が目指しているのは、その先です。

受け継いだものに、新しく入った人の視点を重ねていく。会社が若返るとは、年齢が下がることではなく、昔からのやり方が更新され続けることなのかもしれません。

「本物を作れ」

一度に500個のフライパンをつくったとしても、買った人にとって手元に届くのは、そのうちのたった一つです。つくり手から見れば500分の1でも、お客さまから見れば1分の1。だから、一つひとつを大切につくる。

ちゃんと、いいものをつくる。

新しい挑戦は、そのための手段にすぎない。だからこそ、藤田金属のものづくりには、町工場らしい職人気質と、町工場らしくない軽やかさが同居しているのだと思います。

町工場の「できる」を、広げ続ける

藤田金属は、自分たちのことを「家族経営の町工場」と表現しています。

自社の技術を別の社会課題へつなげる挑戦を続ける藤田金属

常に外から新しい知恵を取り入れ、職人とデザイナーが組み、若い人の意見も受け入れながら、自分たちにできることを少しずつ増やしてきました。

フライパンだけでなく、フェムテックの視点から鉄分摂取を考える「Fe」のように、自社の技術を別の社会課題へつなげる取り組みにも挑戦しています。

「町工場だからできない」ではなく、「この技術で、ほかに何ができるだろう」と考える。

創業者から続く「なんでうちはできへんねん」という精神は、今も形を変えながら残っています。

受け継ぐ技術がありながら、そこに閉じこもらない。藤田金属を見ていると、会社らしさとは、同じことを続けることで守るものではなく、挑戦を重ねるなかで更新されていくものなのだと感じます。

読み終えて、もう一度。

ここまで読んで、最初に感じた3つのLOVEDをもう一度。

  1. 受け継いだ職人技にこだわるだけでなく、新しい技術やデザインを柔軟に取り入れている
  2. 工場を閉じた場所にせず、つくる過程までお客さまにひらいている
  3. 「町工場だからここまで」と線を引かず、異業種や若い世代と混ざりながら挑戦している

ラブカンでは、日本全国にある「愛される会社」やLovedな取り組みを紹介していきます。たくさんのLoved Companyとの出会いが、あなたの価値観を少し広げ、自分のものさしで生きるきっかけのひとつになれば嬉しいです。

「この会社、面白い」

「この働き方、もっと知られてほしい」

「うちの会社にも導入したい!」

そんな事例があれば、ぜひ教えてください。

参照サイト

この会社のことを、誰かに。